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【VI】 意見書の起案


(1) 意見書の基本的構成

 形式は、特許法施行規則に定める通りに記載することが必要であるが、
内容は全く自由である。明細書のように、形式だけでなく、どのような内容を
記載すべきかが法律によって定められている訳ではない。
 審査官を説得するための書面に過ぎないから、説得しやすい形式で記載すればよい。
しかし、できるだけシンプルに。



(2) 起案上の注意事項

(i) 請求項の発明と実施形態の発明との区別


 拒絶理由が通知されているのは、請求項に記載した発明である。
これに反論するに際して、実施形態に特有な構成を前提とした実施形態に
記載の発明(請求項に記載した発明の下位概念)との比較で述べてはならない。
 請求項に記載した文言を使用して反論する。請求項に記載した発明特定事項から
導き出される作用・効果を述べる。


(ii) 禁反言への配慮


 禁反言とは、特許出願についていえば、もし出願人が審査過程である主張をし、
特許庁が出願人のその主張を信じて特許異議の決定及び特許査定をしたのである
ならば、後になつて出願人(特許権者)は、第三者に対し、出願中の右の主張に反する
主張をすることは禁反言の原則によつて許されないとするものである
。  たとえば、意見書において、特許を受けようとする発明の特定の構成要件の意義を強調して
引用文献との差異を主張して特許になった後に、その構成要件について前言を翻すような
解釈を主張することはできない 。*13



上図のように補正によって引例を回避したことにより、相手製品が補正後の
特許請求の範囲に含まれないようになっているとき、これを権利範囲に含むと
主張することはできない。
 侵害訴訟における権利解釈では禁反言が必ず考慮され、これは特許権侵害とされた側
(被告)において大きな非侵害の論拠となる。従って、意見書を提出する場合には、
不用意な意見を述べて禁反言の制約を受けたり、均等論の足かせにならないように
注意しなくてはならない。


(iii) 均等論への配慮


(a)構成だけが記載されている場合


 均等論とは、次のような関係があるとき、D≠D‘だから、対象製品は本来は
特許発明の技術的範囲に属さないが、対象製品が特許発明と同一の目的を達成し、
作用効果においても同一であるときに、対象製品が特許発明と均等であるとして、
「特許発明の技術的範囲に属する」とする考え方である。


特許発明:A+B+C+D


*13 特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外するなど、特許権者の側において
いったん特許発明の技術的範囲に属しないことを明示的に承諾した場合のほか、出願経過中の手続補正書や意見書、
特許異議答弁書等において、特許庁審査官の拒絶理由又は特許異議申立の理由に対応して
特許請求の範囲記載の意義を限定する陳述を行い、それが特許庁審査官ないし審判官に受け入れられた
結果、これらの拒絶理由又は異議理由が解消し、特許をすべき旨の査定ないしと特許を
維持すべき旨の決定がされたような場合には、その特許権に基づく侵害訴訟において、特許権者が
前記陳述と矛盾する主張をすることは、一般原則としての信義誠実の原則ないしは禁反言の
原則に照らして許されないと解するのが相当である(H13.10. 9 大阪地裁 平成10(ワ)12899等
特許権 民事訴訟事件)。


対象製品:A+B+C+D'

 このような均等論の適用によって権利範囲を拡張するには、
「対象製品等が、特許発明の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに
当たるなどの特段の事情がないこと。」が条件となる。
 ところが、意見書提出と同時に行った補正によって減縮した部分は
「特許発明の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたもの」にあたることに
なるから、均等物の範囲を狭める方向に作用する。
 従って、権利成立のために、補正書により請求項を減縮し、意見書によって
その意義を強調することは、将来、補正により除外した部分に均等論による拡張を否定されることを
意味するから、その面からの注意が必要である。




 

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